ぼちぼちロンドン

人となりは柔らかく、あり方は力強く。

20180218

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谷崎潤一郎は日本の伝統的な美意識を、ほのかな光の中に説いた。漆器のつややかな輝きは、明るい電光のもとでなく、ぼうっとした蝋燭の暖かい光に映える。こうした感性をきちんと美しい言葉で書き出すあたりは流石の谷崎先生だ。美しさに対する執着が見てとれる。「陰翳礼讃」は、高校の教科書で漆器の部分だけ読み、その水が滴るような描写が記憶に残っていたのだが、ロンドンの日本美術専門のギャラリーで思いがけない再会を果たした。まあなんという。

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このギャラリー、ふらっと立ち寄っただけだったのだが、琳派の作品で埋められ、なんとなんと酒井抱一の屏風までも売られている。これはもう小さな美術館です。さらにオーナーのこだわりが半端でない。まず、屏風に関しては当時に近い環境で見てほしいということで、電気を消して蝋燭を灯してくれる。また、目線を正座したときの高さに落として観ろと鑑賞方法にも注文がつく。たしかに正しい姿勢でみると、奥行きが全く違って見えるんです。こうして外国人の鋭い感性で理解された日本の美意識には、こちらがハッとさせられる。

極め付けには「Tanizakiを読め!!」とお説教をくらいました。いやあ、さすがにイギリス人に谷崎を勧められるとは思っていなかった。尊いアドバイスである。

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「自分は何がしたいのか」よりも、「自分はどうありたいか」の方が正しい答えが見えることが多い。大仰な野望よりも、自分の美しい在り方を。問いかける相手は常に自分で、さて、永遠に自分との会話を続けることは何かの解決をもたらすのか。答えなんてない。ただ自分との語り合いが生きるということなのか。

迷い、孤独感、そういったものに揺らされながらも、強く根をはって生きていかなければいけない。根が浅い草はすぐに摘まれてしまう